CAPITAN
イングレスだとキャプテン(船長)。そんな第一印象があったので俺は辞書で「船長」を調べ彼をCAPITAN(カピタン)と
呼び続けた。エスパニョルでは後ろのAにアクセントを持ってくる。うひょ蔵ではなくユーイチとして生活した4週間。
俺は彼に釣りを教えてもらい、CUBAを学んだ。
彼との20日間はとても楽しくとても切ないものだった。必ず来るであろう「別れ」を思うと。カピタンはいつも午前中から
お昼過ぎまでホテルメリア・コイバの前のマレコン通りの防波堤で釣りをしている。多いときはデカイ奴を8匹くらい釣る。
大変な子供好きで観光客の子供や近所の子供と遊ぶ姿が微笑ましい。自身奥さんと4人の子供を持っている。
カピタンはダイバーを45年続けた。が、潜り過ぎがもとで喉に穴が開いてしまい今は喋ることが出来ない。カピタンとの
コミュニケーションは身振り手振りとわずかに彼の口からこぼれる息と唇の動きでとる。俺は55ドルちょっとでリール付き
釣り竿を買った。もちろんこんな高価なものを買えるのはツーリスタと一部の富裕CUBA人だけだ。彼の道具はとても
みすぼらしい。でもカピタンは俺にリールの使い方、当りの合わせ方、仕掛けの作り方などを何度も何度も教えてくれた。
彼はとても世話好きだ。俺はもう自分ひとりで仕掛けも作れれば餌もつけられるのに。
CUBAの伝統的な?釣り。糸巻きに直接仕掛けを付けてぶんぶん振り回して投げる。
みんな伏せろ!カピタンが投げるぞ!
名前をホセ、セニョール・ホセという。カピタンは貧乏なんだか金持ってるんだかよくわからない。BUSに乗るときはいつも
おごってくれるし、アイスクリームやクッキー、俺の大好きなマニなどはたくさん、もういらないってのにおごってくれる。
でも履いている靴は底がはがれ、着ている服はぼろぼろ。この人の収入源は最後まで聞けなかった。漁ったってたいして
釣れる訳でもなし。
CUBAの釣り道具(おもり・針・ラインなど)はLA HABANA VIEJAで買う。そこの防波堤に腰掛けている釣り人(独りのこらず
アミーゴになった)が売人だ。カピタンと2回買い付けに行った。針50ケ、おもり60ケ、毛ばり7ケ、ワーム(疑似餌)20本
と大量に買い込む。LA HABANA VIEJAはVEDADOから少し遠いから。全部で5ドル弱。日本であんなに大量に買ったら
えらいことになる。金はいつものお返しにと、俺が出した。カピタンはずっしりと重い袋を抱えて満足気だ。
俺が釣った8匹。一番でかいのはLORO。写真で俺が持ってる奴だ。プルポ
(たこ)が釣れた時はびっくりした。LENGUAO(舌びらめ)は美味かったな。カピタンに言わせると魚は何でも美味いらしい。
カピタンの周りにはいつも子供がいっぱいだ。カピタンを慕っている少年・青年は皆いい子ばかりだ。俺が地球に引っ掛けてしまった
針を潜ってとってくれたり、魚の情報を教えてくれたり。近所のガキは1ドルくれぇ、のフレッコ(ジュース)飲ませろぉ、のウザイが。
決して自分からは腹減った、とは言わないのだ。特にEDUORDOという少年にはカピタン同様お世話になった。ありがとう。
2月7日に日本に戻らなければならない。2〜3日前から釣竿を振るたびに涙が出てきていた。みっともないので、あさっての
方向を見て釣りをしていた。6日。7日の11時までは防波堤にいるから、と約束をし宿に帰る。頭の中を駆け巡る楽しい思い出。
また来ればいいさ、また来れば。7日、涙は少し落ち着いている。カピタンはちょこんと俺の隣に座る。前の日、俺が日本に帰ったら
さびしい、と自分の心臓に手を当てる姿が重なる。11時。俺は「ウルティモ!(最後)」と叫び、竿を振る。釣れはしない。糸を巻き上げ
竿をカピタンにあげる。今度来た時にまで預かるよ、と言ってくれている。握手。EDUORDOとも握手。と、カピタンに抱きしめられた。
とたんに溢れる涙。恥ずかしい。手を振り「アディオス、アスタ ウン ディア!」俺は叫ぶ。マレコンを走り渡り、また手を振る。
笑顔で。カピタンも手を振り返してくれている。「アデイオス アスタ ウン ディア!オトラ ベス ア クーバ!」
Adios hasta un dia!Otra vez a CUBA!
